8つの怖い話
すると次の瞬間……ギィ。


微かに音がした。


隣の剛もその音に気がついたのか、怪訝そうに周りを見ている。


だけど音は周囲から聞こえてきたんじゃない。


今、直人たちが立っている眼の前から聞こえてきたのだ。


ロッカーに絡みついていた赤いテープが、何者かに剥がされていくようにゆっくりと広がり、落ちていく。


「え……」


直人と剛が後退りをしたそのときだった。


テープのすべてが剥がれ落ちて、ロッカーが少しだけ開いたのだ。


今すぐ逃げ出したいのに、足が重たくて動かない。


まるで誰かに足首をガッチリと掴まれているようだ。


剛も同じようで、青ざめた顔で小刻みに震え始めている。


そして……ギィ。


また、音がした。
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