8つの怖い話
そしてベランダの窓まで来たとき、そこに手形がついていることに気がついたのです。


Aさんは息を飲み、ベランダに出ました。


下着や服を干していましたが、幸いなにも取られている様子はありません。


手形はきっといつの間にか自分のものがついてしまっていたのだ。


そう思い、ベランダに出てその手形をふこうとしました。


ですが拭いても拭いても一向に綺麗になりません。


不思議に思ったAさんは室内に戻り、内側から手形を拭いてみました。


するとそれは綺麗に拭き取れてしまったのです。


なんだ、内側からだったのか。


そう思った次の瞬間、玄関の鍵が閉められる音がしました。


……そうです。


Aさんがゴミ出しに行っている間に部屋に侵入した相手は、下着を盗むために窓に手をかけました。


そのときにAさんが帰ってきたので、室内に隠れてジッと身を潜めていたのです。


次の瞬間、Aさんの悲鳴が響き渡ったのでした……。
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