8つの怖い話
母親がテレビから視線を美聡へ移動する。


眉間に眉がよっていて、あまりよくない表情だ。


美聡はこんなことで母親を怒らせてはいけないと思い、すぐに撤退しようとした。


「まぁ、ないことはないけど」


「え、なにか知ってるの?」


リビングを出ようとした美聡はすぐに母親の隣に腰をおろした。


ここでなにか聞けるのならそのほうがいい。


クラスメートの瑞穂は怖い話を披露することも大得意で、聞く方は本気で怖くなってしまうのだ。


そのせいで美聡はしばらく学校のトイレに行けなくなってしまったこともある。


瑞穂がメンバーの1人だったとしたら、8つ全部1人で集めてきてしまいそうだ。


「そりゃあ、お母さんはこの街に暮らして長いもの。色々と知っているわよ」


「たとえばどんな話?」


美聡はかばんからメモとペンを取り出して居住まいを正した。


「県境にある峠はホラースポットだとか、山の上に廃病院があるとか。赤い橋は渡ってはいけないとか」
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