8つの怖い話
「お母さん、そういうんじゃなくてさ。もっとリアルな事件っていうか」


母親が言っているのはどれもこの街では有名なものだった。


実際に若い人たちが肝試しで行ったりもしている。


「あらそうなの? 怖い話って言うから、てっきりホラースポットのことかと思って。えーっと、リアルな事件? 美聡そんなものを調べてどうするつもり?」


途中まで調子が良かったはずなのに、母親の眉間にまたシワがよってしまった。


美聡は慌ててソファから立ち上がり「学校の宿題だよ。この街の歴史を調べるんだけど、みんなと同じものじゃつまらないなと思って。でももういいよ。自分で調べてみるから」と、早口に説明した。


「ちょっと美聡、待ちなさい!」


という母親の声を無視して、すぐにリビングを出たのだった。
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