美しき禁断の果実
意を決し、顔を上げる。
真っ直ぐ見つめる彼の目が私を捉えて離さない。
思わず視線を逸らしそうになるが、ここで逃げたら一生後悔すると直感した。
だから、私もまた彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
朝比奈美織を審判する雪五朗の言葉をただ待っていた。
しばらくして帰ってきた言葉は予想すらしていなかったものだった。
「知っていた」
「え?」
「俺が毎回片づけていたからな」
雪五朗の眉尻は下がっていた。
それはまるで目の前にいる私を愛しいと思っているかのような、そう錯覚させられるほどに破壊力を持った眼差しだった。
彼は続けてこうも言った。
「それに、楽園の大樹に実っていた林檎も勝手に食べていたろう」
「な、何で知っているの……」
先ほどから驚きに私の瞳は開きっぱなしだった。
「いつも問題になっていなかったのに気が付かなかったのか?」
揶揄う口調に頬を染めて、私はこくりと頷いた。
確かにいくら何でも林檎の実がなくなっていたら多少なりとも問題になっていてもおかしくはなかったし、当時も僅かに違和感を覚えていたような――――。
思いもよらないタイミングで、私は彼からその理由を知らされるのだった。
「えーっとなんだっけ。……そうそう、無口の吾朗と呼ばれている成金の子どもが、毎度いそいそと片付けていたらしいぞ」
「それって……」
私の髪先をひと房手に取り、雪五朗はそこに口づけを落とした。
どきりと心臓が鳴って痛い。
それは甘い期待と切なさを伴った痛みだった。
「それでも荒らされた花や無くなった林檎の実は元に戻らない。……成金の子どもにその罪を押し付けるのはとても簡単だったのだろう」
自分が罪を被ったという雪五朗の独白に私は呼吸が浅くなった。
「まぁ、そうだったの……」
何を言って良いのか分からず、私はただ視線を彷徨わせた。
罪悪感に押しつぶされそうになる私の口元に彼の指がそっと当てられた。
「もう過去のことだ。今更謝らなくていい。だけど」
「だけど?」
雪五朗の手がするりとネグリジェの中に入ってくる。
背中をゆるやかに這い上がり、追いかけるようにして私の肌がぞくりと震えた。
「過去の罪でも償いは必要だ。そう、思わないか?」
彼の低い声が私の耳に落ちてくる。
妖艶にその声が誘っていた。
「どういう、こと?」
彼の言わんとしていることが本当は分かっていた。
彼の手が当てられている箇所が期待に高揚しているのだから。
影が落ちてくる。
雪五朗の影だ。
私の身体は強張るのだが、それさえも包み込んでしまうように彼が覆いかぶさってくる。
恐怖してもおかしくはなかった。
だが、ゆっくりと近づいてくる雪五朗の巨漢はどこまでも温かさに満ちていた。
彼はそのまま流れるように私の唇を奪う。
次第に荒々しくなっていく攻めに私は腰が砕けた。
そう、既に彼は私の弱いところを十分に熟知していたのだ。
真っ直ぐ見つめる彼の目が私を捉えて離さない。
思わず視線を逸らしそうになるが、ここで逃げたら一生後悔すると直感した。
だから、私もまた彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
朝比奈美織を審判する雪五朗の言葉をただ待っていた。
しばらくして帰ってきた言葉は予想すらしていなかったものだった。
「知っていた」
「え?」
「俺が毎回片づけていたからな」
雪五朗の眉尻は下がっていた。
それはまるで目の前にいる私を愛しいと思っているかのような、そう錯覚させられるほどに破壊力を持った眼差しだった。
彼は続けてこうも言った。
「それに、楽園の大樹に実っていた林檎も勝手に食べていたろう」
「な、何で知っているの……」
先ほどから驚きに私の瞳は開きっぱなしだった。
「いつも問題になっていなかったのに気が付かなかったのか?」
揶揄う口調に頬を染めて、私はこくりと頷いた。
確かにいくら何でも林檎の実がなくなっていたら多少なりとも問題になっていてもおかしくはなかったし、当時も僅かに違和感を覚えていたような――――。
思いもよらないタイミングで、私は彼からその理由を知らされるのだった。
「えーっとなんだっけ。……そうそう、無口の吾朗と呼ばれている成金の子どもが、毎度いそいそと片付けていたらしいぞ」
「それって……」
私の髪先をひと房手に取り、雪五朗はそこに口づけを落とした。
どきりと心臓が鳴って痛い。
それは甘い期待と切なさを伴った痛みだった。
「それでも荒らされた花や無くなった林檎の実は元に戻らない。……成金の子どもにその罪を押し付けるのはとても簡単だったのだろう」
自分が罪を被ったという雪五朗の独白に私は呼吸が浅くなった。
「まぁ、そうだったの……」
何を言って良いのか分からず、私はただ視線を彷徨わせた。
罪悪感に押しつぶされそうになる私の口元に彼の指がそっと当てられた。
「もう過去のことだ。今更謝らなくていい。だけど」
「だけど?」
雪五朗の手がするりとネグリジェの中に入ってくる。
背中をゆるやかに這い上がり、追いかけるようにして私の肌がぞくりと震えた。
「過去の罪でも償いは必要だ。そう、思わないか?」
彼の低い声が私の耳に落ちてくる。
妖艶にその声が誘っていた。
「どういう、こと?」
彼の言わんとしていることが本当は分かっていた。
彼の手が当てられている箇所が期待に高揚しているのだから。
影が落ちてくる。
雪五朗の影だ。
私の身体は強張るのだが、それさえも包み込んでしまうように彼が覆いかぶさってくる。
恐怖してもおかしくはなかった。
だが、ゆっくりと近づいてくる雪五朗の巨漢はどこまでも温かさに満ちていた。
彼はそのまま流れるように私の唇を奪う。
次第に荒々しくなっていく攻めに私は腰が砕けた。
そう、既に彼は私の弱いところを十分に熟知していたのだ。