美しき禁断の果実
唇に温かいものを感じて私は目を覚ました。
どうやら一瞬だけ気を失っていたみたい。
焦点が世界を捉えると、至近距離に雪五朗の漆黒の瞳があった。
真っ黒なそこに私が映っていた。
目と目が合った、と思ったときにはもう一度唇が触れ合っていた。
一瞬のち、離れたあと彼が口を開いた。
「この部屋には露天風呂が付いているらしい」
「そう」
「そこから見える景色は一等綺麗なんだとか」
「そう」
「……一緒に入らないか?」
彼は自分の言葉に耳朶を真っ赤にさせていた。
無表情な顔とは裏腹にどうやら照れているらしかった。
本当に、この男は。
不覚にも貰い照れしながら、私もまた微かに頬を染めてこくんと頷いた。
未だ私の上に乗っている雪五朗の身体を押し返しながら、自ら立ち上がろうと身体に力を入れた。
だが、そんな私の行動は不可抗力的に高くなる視点によって阻まれたのだった。
彼が私をお姫様抱っこしているのに遅れて気づいた。
「ちょっと! 降ろしてよ」
「駄目だ」
慌てて抗議する私に被せるように即答した雪五朗。
恥ずかしさにムゥ、と眉根を寄せるとそこに口づけが降りてくる。
そういうことではないという思いと、ほんのりとした嬉しさが私の心を複雑にする。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、雪五朗がふっと笑みを見せたのだ。
彼の微笑の中に愛おしさが含まれているような気がして、私は酷く驚いた。
こんな優しい表情をわたしにも向けるのね。
林檎の木を見ていた彼の横顔を思い出して、ちくりと胸の奥が軋んだ。
そのままの流れで気が付けば私は彼に甲斐甲斐しく全身を洗われていた。
隅々まで優しく触られて、私の身体がぽーっと熱くなっていく。
その熱に名前が付けられる前に、彼の手は私の頭に伸びていた。
丁寧に髪を洗われながら、その心地よさに今度は目を細めた。
意外とテクニシャンなのね。
雪五朗がぽわぁと気持ちよくなった私を抱えて、ゆっくり露天風呂に浸かる。
熱いくらいの温泉が私たちの身体を芯から温めてくれた。
確かに、雪五朗の言う通り山の向こう側に沈んでいく夕焼けと豪奢な滝の眺めは圧巻だった。
硫黄によって白くなったお湯が私たちの身体を包み隠している。
その中で、私は彼に後ろから抱き締められていた。
拒否する理由もなくて、そのままにしていると次第にゆっくりと雪五朗の大きな手が私の全部をつまびらかにしていく。
触られて、キスをされて、たぶん私はのぼせてもいたのだろう。
――――彼に、触れたい。
そう思ったときには既に私は彼の身体を弄っていた。
筋肉質な雪五朗の身体はとても官能的だった。
驚いた彼の表情にはっと自分の行動を顧みて、赤面する。
それでも、一度生まれた私の欲望は止まらなかった。
「何よ。……火をつけたのは、貴方でしょ」
ついっとそっぽを向いてそう言うと、ぎゅうっと抱きしめられた。
「っ、煽んな」
掠れた艶っぽい声が耳を犯す。
彼のそれが固くそそり立ち、私の腹に当たっていた。
微かな予感に身体の奥が疼いた。
どうやら一瞬だけ気を失っていたみたい。
焦点が世界を捉えると、至近距離に雪五朗の漆黒の瞳があった。
真っ黒なそこに私が映っていた。
目と目が合った、と思ったときにはもう一度唇が触れ合っていた。
一瞬のち、離れたあと彼が口を開いた。
「この部屋には露天風呂が付いているらしい」
「そう」
「そこから見える景色は一等綺麗なんだとか」
「そう」
「……一緒に入らないか?」
彼は自分の言葉に耳朶を真っ赤にさせていた。
無表情な顔とは裏腹にどうやら照れているらしかった。
本当に、この男は。
不覚にも貰い照れしながら、私もまた微かに頬を染めてこくんと頷いた。
未だ私の上に乗っている雪五朗の身体を押し返しながら、自ら立ち上がろうと身体に力を入れた。
だが、そんな私の行動は不可抗力的に高くなる視点によって阻まれたのだった。
彼が私をお姫様抱っこしているのに遅れて気づいた。
「ちょっと! 降ろしてよ」
「駄目だ」
慌てて抗議する私に被せるように即答した雪五朗。
恥ずかしさにムゥ、と眉根を寄せるとそこに口づけが降りてくる。
そういうことではないという思いと、ほんのりとした嬉しさが私の心を複雑にする。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、雪五朗がふっと笑みを見せたのだ。
彼の微笑の中に愛おしさが含まれているような気がして、私は酷く驚いた。
こんな優しい表情をわたしにも向けるのね。
林檎の木を見ていた彼の横顔を思い出して、ちくりと胸の奥が軋んだ。
そのままの流れで気が付けば私は彼に甲斐甲斐しく全身を洗われていた。
隅々まで優しく触られて、私の身体がぽーっと熱くなっていく。
その熱に名前が付けられる前に、彼の手は私の頭に伸びていた。
丁寧に髪を洗われながら、その心地よさに今度は目を細めた。
意外とテクニシャンなのね。
雪五朗がぽわぁと気持ちよくなった私を抱えて、ゆっくり露天風呂に浸かる。
熱いくらいの温泉が私たちの身体を芯から温めてくれた。
確かに、雪五朗の言う通り山の向こう側に沈んでいく夕焼けと豪奢な滝の眺めは圧巻だった。
硫黄によって白くなったお湯が私たちの身体を包み隠している。
その中で、私は彼に後ろから抱き締められていた。
拒否する理由もなくて、そのままにしていると次第にゆっくりと雪五朗の大きな手が私の全部をつまびらかにしていく。
触られて、キスをされて、たぶん私はのぼせてもいたのだろう。
――――彼に、触れたい。
そう思ったときには既に私は彼の身体を弄っていた。
筋肉質な雪五朗の身体はとても官能的だった。
驚いた彼の表情にはっと自分の行動を顧みて、赤面する。
それでも、一度生まれた私の欲望は止まらなかった。
「何よ。……火をつけたのは、貴方でしょ」
ついっとそっぽを向いてそう言うと、ぎゅうっと抱きしめられた。
「っ、煽んな」
掠れた艶っぽい声が耳を犯す。
彼のそれが固くそそり立ち、私の腹に当たっていた。
微かな予感に身体の奥が疼いた。