虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
ミッドタウンに向かうクーペの中でも、真理は元気に喋り続けて、よく笑った。
それに九条くんがスマートに相槌を入れて、巧みに話題を繋げてくれる。
真理は、住んでいるハーレム界隈の様子や、黒い肌の陽気な仲間たちとのエピソード。
九条くんは、パイロット同士のびっくりするようなこぼれ話や、雲の上の世界の美しさについて。
二人の会話に耳を傾けているうちに、黒いクーペはマンハッタン島への橋を渡って、目指すミッドタウンに入っていた。
「理恵、あれがクライスラービルだよ」
真理が指差す先に、夜空に突き刺さるようなフォルムの摩天楼が、鮮やかにライトアップされてそびえ立っていた。
飛行機からも見えた、煌めく摩天楼の街。
あの時は無機質で冷たい輝きだったのに、今見ると、暖かなともしびのように映るのは何故だろう。
私はふと、ハンドルを握る九条くんの横顔を見つめた。
「ごめんな。本当ならブロードウェイとかタイムズスクェアとか案内してあげるところだけど、もうこんな時間だし」
九条くんが済まなそうに言う。
私はそっと、微笑んだ。