虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
この言葉に、田村部長が初めて高見澤さんを見た。細い目が、あの凍てつくような色をたたえている。
「失礼な男だな。誰だね、君は?」
「しがない探偵だよ」
「ふん、ドブネズミが──」
温顔を崩さなかった田村部長の顔が、冷たく歪んだ。まるで隠されてきた心の顔が、表に現れてきたようだった。
「目障りだ。金が欲しいなら100万でも200万でもくれてやる。さっさとここから立ち去れ」
「悪いな、田村さん。俺が欲しいのは金じゃないんだ」
威圧する田村部長に、高見澤さんは不敵な笑みを浮かべて、一歩も引かない。
「俺が欲しいのはあんたの辞表だよ。あんたに会社から消え去ってもらいたいんだ」
「なんだと──?」
「俺はそこの篠原さんを助けにきたんだ。あんたが会社にのさばっていちゃ、篠原さんは怖くて出社もできないだろうからな」
「私が篠原くんに、一体何をしたというんだ」
「健忘症なのか、あんた」
高見澤さんは嘲笑った。
「篠原さんを深夜ホテルに呼び出して、あんた何をするつもりだった? おおかた手ごめにして彼女の口を封じるか、脅して退社に追い込むつもりだったんだろう。篠原さんは、あのリチウムプロジェクトの真相を知る、数少ない一人だからな」
田村部長の顔が歪んだ。
怒っているようにも、嘲笑っているようにも見える、背筋が凍り付くような形相だった。
「あのプロジェクトは私の元で、既に始動している。政府の認可も受け、銀行筋から融資枠も取り付けた。協力企業とのジョイントベンチャーも立ち上がっている。誰にも邪魔はさせん──!」