虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「何かを隠している。ならばその何かを暴けばいい」
高見澤さんは言う。
「簡単なことだ。それ自体が分からなくても、その背景から輪郭を浮かび上がらせることは可能だからな」
そして指折り数えるように、
「東南アジアの港湾整備、中東の石油積出施設建設、南米の鉱山開発。山井商事が政府主導の海外援助事業に参加をするたびに、おかしな会計操作が行われて、巨額の資金が消えて行った」
「……」
「日本の海外援助事業と現地企業と山井商事。このトライアングルの中で、巨額の資金が消えていったんだ。田村さん、何があったのか言ってみろよ」
「……」
「言えないのなら、別の人に語って貰おうか」
私と篠原さんも、「えっ」と声を上げそうになった。他の人を呼んでいるなんて、何も聞かされていない。
高見澤さんが肩越しに「来いよ」と声をかけると、今まで柱の陰に隠れていたその人は、ヒールの音を響かせながら、非常灯の明かりの下に姿を現した。
その姿に、私と篠原さんは息を呑んだ。
田村部長からも低いうめき声が漏れる。
「芽依亜、おまえ──!!」
田村部長に名前を呼ばれても、黒木さんは眉一つ動かさずに、
「秘密のアクセスコードを使って隠していたのは」
報告書を読み上げるような事務的な口調で、言った。
「海外援助事業の資金を還流させた、政権党への極秘の献金ルートです」
あまりのことに田村部長だけでなく、私と篠原さんも呆然としてしまった。
そして、高見澤さんの声が響いた。
「チェックメイトだな、田村さん。素直に白旗を上げないと、これが公になったら会社が吹っ飛びかねないぜ」
田村部長は、恐ろしい形相のまま私たちを睨んでいた。
そのまましばらく身じろぎもしなかったけど、急に顎を引くと、くっくっと喉を鳴らし始めた。
そして激しく哄笑して、言った。
「愚か者め、私が何の策も施さずにこの場に来たとでも思っているのか」
部長が倉庫全体に響くような声で「出てこい!」と叫ぶと、表のシャッターが開いて、そこから人相の悪い男たちが、20人ほどなだれ込んできた。