虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「男はなぶり殺しにして海に沈めてしまえ! 女はお前らの好きにして構わん!!」
田村部長のその声を受けて、男たちがいやらしい顔をして私たちに迫る。
篠原さんが「先輩──!」と叫んで、私の背中にすがりついた。
でも、そのときだった。
急に高見澤さんが笑い始めた。
ひとしきり大笑いした後、呆気に取られる男たちに向かって、
「いやあ、笑える。時代劇顔負けの悪者っぷりだな」
そして田村部長に向かって、
「愚か者はあんただよ田村さん。なんで俺がこんなところにあんたを呼び出したと思ってるんだ? あんたが苦し紛れにこうしてくるだろうと、予想していたからなんだぜ」
そして、高見澤さんは天井を仰ぐようにして、叫んだ。
「紫月! 出番だぜ!!」
その声と同時に、私たちの背後のシャッターが、ガラガラと音を立てて上がった。
そしてその人を先頭に、数人の人影が入ってきた。
その人は、クリムゾンのスーツに、軽快な黒いパンツを合わせていた。
もしかしたら今、日本で一番赤い色が似合う女性かも知れない。
そんな彼女に、人相の悪い男が一人絡もうとした。
「何だあ、おまえは?!」
事情を知る人なら、決して彼女にそんな口はきかない。その人には、守護神とも言うべき男性が常に付き従っているからだ。
愚かな男はたちまち、その背の高い守護神に、首をあさっての方向に捻じ曲げられた。
「紫月さまに穢らわしい口をきくな、ウジ虫」
哀れな男は、そのままズボンに失禁の染みを作って、昏倒した。
それを合図に、人相の悪い男たちは、彼女たちに一斉に襲いかかったけど──、
まるで勝負にならなかった。
榊さんが無造作に前に出るだけで、男たちは右に吹っ飛び、左に投げ飛ばされた。
榊さんに従う他の人たちも、圧倒的な強さで男たちを排除した。
「紫月さん! 榊さん!」
私の声に、紫月さんはこちらを向いて、にっこり微笑んだ。
「お久しぶりね、早川さん。もう大丈夫よ」
そして紫月さんは、田村部長に向き直った。
「初めまして、田村部長。私は御倉商事経営企画室長、御倉紫月です」
「御倉の──?!」
「ええ。御倉家当主、御倉宗一の孫娘です」