虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
そんな紫月さんと高木社長のやり取りに、高見澤さんが割って入った。
「ああ、それとな、高木社長。銀行や議員さんたちに泣きつこうとしても無駄だぜ」
紫月さんにはまだ憐れみの情があったけど、高見澤さんは明らかに楽しんでいる風情で、
「あんたのところのメインバンクの三友銀行は、早々に撤退を決めた。というより、三友グループ自体が、今回の件では不介入の方針だからな」
そして嫌味たっぷりに付け足した。
「いたいけなOLをいじめて喜んでいるような助平会社を助けるために、天下の御倉と戦争なんかしたくないとさ」
国内で唯一、御倉グループに対抗可能な三友グループに見捨てられてしまっては、山井商事はまさしく万事休すだった。
「永田町のセンセーたちも、今頃自分の言い訳を考えるのに必死で、誰もあんたらのことなんか気にしちゃいない。まあ、諦めるんだな」
高見澤さんに続いて、紫月さんも言葉を足した。
「大株主や機関投資家も、既に抑えてあります。国内は御倉が。海外やオイルマネー関係は、ドバイのシャキール・コンツェルンが」
(まあくん──)
シャキール、つまり九条くんが、私を助けるために動いてくれていた。
何と言ったらいいんだろう、涙が出そうになる。
そして高見澤さんが、
「つまりさ高木社長、そして田村さん」
とどめを刺すように言った。
「九条と御倉、今日本で一番ヤバい二人を敵にまわした時点で、あんたらはとっくに詰んでいたんだよ」
泣き叫ぶような声を遺して、高木社長は通話を切った。
田村部長はがっくりと膝を落として、倉庫の床に両手をついた。
遠くから、パトカーのサイレンが近付いてくる。