虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
そして篠原さんの肩に手をおいて、軽く目配せしてあげた。
「この先の天王洲に、港の夜景がよく見えるアメリカンダイニングがあるんです。いつも皆さんが召しあがっているお食事とは、比べものにならないでしょうけど」
皆さん、話に乗ってくださるかな?
紫月さんは笑顔で乗ってくれた。
「面白そうね。では、ご厚意に甘えさせていただこうかしら。榊、あなたもいらっしゃい」
榊さんは一瞬とまどったような表情をみせたけど、すぐに
「かしこまりました、紫月さま」
と応えて、紫月さんの後ろに付き従った。
でもすれ違いざまに見た榊さんの口元が、微かにほころんでいたのは、何故なのかな?
高見澤さんも、
「じゃあ、俺もご馳走してもらおうか」
と屈託のない様子で応じてくれた。
そして私たちは天王洲に移動して、東京港の夜景を眺めながらささやかなお食事会を設けた。
オープンテラスに席を取って、大きなテーブルを囲んだソファーに思い思いに腰かけて、ちょっとジャンクなアメリカンダイニングを楽しんで……。
意外だったのは紫月さんで、ハンバーガーやスペアリブに豪快にかぶりついて、ご満悦な様子。
肉食系なんですね、紫月さん。
榊さんは、そんな紫月さんのお世話をするのが一番しっくりくるみたいで、お食事会の最中もずっと執事をしていた。
紫月さんに絡んでくる人さえいなければ、榊さんは謹厳で物静かな執事さんです。
高見澤さんは相変わらずマイペースで、穏やかに夜景と食事を楽しんでいる。
それでもときおり、篠原さんと笑顔でお話しているのは、高見澤さんの気遣いなのかな?
それとも──。
篠原さんはそんな高見澤さんの横顔を見つめて、ずっと嬉しそうにしていた。