虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
あと、ささやかな進展が。
この集まりで、紫月さんが私のことを名前で呼んでくれるようになりました。
また榊さんの下のお名前が、響介さんとおっしゃることも、紫月さんが教えてくれました。
そして、高見澤さんの意外な素顔も──。
「直人はね、表向き探偵なんてやっているけど、実は裏の顔があって」
高見澤さんは、「おい、紫月」と話を止めようとしたけど、紫月さんは「別にいいでしょう」と軽くいなして、
「直人は『ウロボロス』という国際的なハッカーグループのリーダーなのよ。電子の世界では、ちょっとした有名人ね」
そういえば、と思い出すのが、帝都ホテルのスイートルームで、高見澤さんが海外の誰かと盛んに交わしていた電話だった。あれはきっと、『ウロボロス』のメンバーと連絡を取り合っていたのに違いない。
「ハッカーグループって、俺たちはその辺のチンピラ共とは違うぜ」
高見澤さんは口をとがらせた。
「俺たちは真面目な会社に悪さをしたりはしない。逆に、企業情報に侵入して悪さをするような連中を、懲らしめたりしているんだ」
「まあ、例えて言うなら、電子戦の傭兵集団ね。味方につけると心強いけど、敵に回すと厄介この上ない」
紫月さんのフォローに、篠原さんが目を輝かせた。
「すごいです、直人さん。素敵です」
頬を真っ赤に染めて名前で呼んで、篠原さんはキラキラした瞳で、高見澤さんを見つめている。
「お、おう」
意表を突かれたのか、あの高見澤さんが、篠原さんに押され気味になっていた。
それを眺めながら、紫月さんと私は小声で──。
「ちょっと理恵、本当にいいの?」
「何がですか?」
「直人と明日美ちゃんよ。私には、可愛らしい子ウサギが、飢えたオオカミの前に飛び出してしまったようにしか見えないのだけど」
「そうでしょうか。私には、お似合いの二人のように思えますよ」
「そうかしら……」
紫月さんは渋い顔をしていたけど、私はこの恋を応援してあげたい。
高見澤さんは少し斜に構えているけど、本当はすごく勇敢で優しい人だということが、よくわかったから。
頑張ってね、明日美ちゃん。