虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 それから私たちは、ダイアモンド・ヘッドを越えた先にある、カハラ地区の大きなショッピングモールで食材を買い込んで、九条くんの別荘に向かった。

「もうすぐ着くからね」

 九条くんの別荘は、高級別荘地で有名なカハラ地区の、海に面した一角にあった。

「わあ……」

 着いて思わず、私はため息をついた。
 白い綺麗な建物の向こうには、陽光を受けて輝く紺碧の海が、遠く水平線まで広がっていた。

「軽くお昼を食べたら泳ぎに行こう。いい場所を知ってるんだ」

 昼食後、九条くんが連れて行ってくれたのは、オアフ島の東端、マカプウ岬の北に広がるマカプウ・ビーチだった。

 目の前に広がる太平洋の大パノラマと、繰り返し打ち寄せる波が岩に砕ける音。
 椰子の並木が、潮風に気持ち良さそうに揺れている。
 
 私はワイキキで買った白いビキニ姿になって、輝く砂浜に降り立った。
 
 傍らの九条くんは、サファリタイプのハーフ丈の水着に、目を守るために濃いサングラスを掛けている。

 九条くん、やっぱりカッコいい。

 マカプウ・ビーチは九条くんのお勧めだけあって、海も空も砂浜も、全てが澄み渡って、眩しく輝いていた。

 でも……ちょっと心配が。
 
 太平洋から打ち寄せる波は、サーフィンやボディボードを楽しむ人にはちょうどよさそうだけど、実は私、そんなに泳ぎは得意じゃない。

 少し尻込みしてしまった私に、九条くんは優しく微笑んで、言った。

「心配ないよ、こっちに来てごらん」

 九条くんが手を引いてくれた先に、大きな潮溜りがあった。引き潮で海が遠ざかった後に、岩場に残された海の水の大きな水溜りだ。

「タイドプールって言って、天然の海水プールだよ」

 大きなタイドプールは波もなくて、現地の家族連れも安心して海水浴を楽しんでいる。

「理恵、これを付けて」

 九条くんが差し出してくれたのは、水中ゴーグルとシュノーケルのセットだった。 
 それを付けて、タイドプールの海水に顔をつけると──、

(魚だ! 可愛い小魚がいっぱい──!!)

 青や赤やオレンジの、色とりどりの小さな魚たちが、岩場の陰でふるふる胸ビレを動かしている。

 私は夢中になって、穏やかなタイドプールでシュノーケリングを楽しんだ。
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