虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「会ってほしい人?」
「なかなか忙しい人だから、滅多に会えないんだけど、理恵のことを話したら、是非会いたいって」
「私の知ってる人なの?」
九条くんは軽く微笑んで、言った。
「俺の母さんだよ」
九条くんのお母さんは、ドバイの石油王、シャキールの跡取りと再婚されて、今はドバイにお住まいのはず。
でも考えてみたら、実の息子の結婚なのだから、相手の女性に会いたいと考えるのは当然──というより、本当だったら私の方からご挨拶に行かなくちゃならないのに。
「いいよ、私からご挨拶にお伺いするから」
「いろいろ事情があって、今母さんはシンガポールにいるんだ。でも忙しくて、あまり自由に移動できなくて」
九条くんは、窓の外の青い水平線に目をやってから、また視線を戻した。
「母さんは何とか都合をつけて日本まで来てくれるそうだから、そのタイミングで俺たちも一度、日本に戻ろう」
「でも……」
「俺も理恵のご両親に、ご挨拶したいし」
その言葉を聞いて、私も慌ててしまった。
私が急に会社を辞めて、ニューヨークの真理のところに行くと言ったときも、すごく心配させてしまったのに、3か月もしないうちに婚約者を連れて帰って来たら、父さんと母さんは一体どんな顔をするだろう。
しかもそれが、日本有数のお金持ちだなんて知ったら──。
「大丈夫だよ、理恵」
戸惑う私の手に、九条くんは自分の大きな手を重ねて、微笑んでくれた。
「俺たち一緒になるんだから。こんなふうに手を取り合って、一つ一つやっていこう」
なぜだろう。
九条くんの言葉って、どうしていつも、こんなに私の胸に染みていくんだろう──?
私もこぼれそうになった涙を拭いて、彼に微笑んでみせた。