虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 真理は口を閉じて、じっと私のことを見つめた。
 カフェの窓の向こうには、セントラルパークの木々が緑の翳を落としている。

 すると急に、いたずらっぽく笑って見せた。

「びっくりした? 私だってその程度のことは考えてるよ。なんと言ったって、私は理恵の妹だから」

「真理……」

「それにね、こうなるとやっぱり感じるんだ。理恵には、幸せになってほしいって」

 真理はまたレモネードのストローを吸うと、美味しそうに喉を鳴らして、笑った。

「私は理恵に反発して、ことさらにワガママを言ったりしてきたけど、理恵の痛みや苦しみは、ずっと分かってたつもり。それ以上に、私のワガママで余計に理恵に、迷惑かけてきたことも」

 高校もサボりがちで、大学は演劇サークルに入り浸って単位ギリギリ、なんとか滑り込みで就職したと思ったら、一月もせずに会社を辞めて、単身ニューヨークに渡った真理。

 あまりに違い過ぎる妹に、私もきっと、羨望と嫉妬を感じていた。
 なのに──。

「私が自分勝手した分も、余計に理恵がかぶっちゃったよね。父さんと母さんの期待が、全部理恵に行ってしまって。窮屈で重かったよね、ごめんね」

「……」

「だからね、理恵には幸せになってほしいんだ。理恵が幸せになってくれないと、私もきっと、幸せになれないと思うから」

 そしてまた、いたずらっぽい笑顔をみせた。

「憧れのまあ兄を譲ったんだから、絶対幸せになるんだぞ、理恵」
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