虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
簡単でとても贅沢な夜食の後、九条くんはこう言った。
「もう遅いし、今夜は泊まっていきなよ」
ためらう気持ちもあったけど、ここは九条くんの好意に甘えることにした。
「来客用の部屋を使って。中に専用のバスもトイレもあるから」
すご過ぎて、もう感覚が麻痺してしまう。
交代で脚付きのバスタブにつかって、ドライヤーで髪を乾かして、私と真理は、キングサイズのベッドにそれぞれ横になった。
柔らかなベッドで、真っ白なシーツにくるまりながら、真理が呟いた。
「すごいね」
「うん、すごく豪華」
「そうじゃないよ。私が言ったのは、まあ兄のこと」
「……」
「背が高くて、ハンサムで、お話が面白くて、料理が上手」
真理は呆れたように指折り数えながら、
「そのうえパイロットでお金持ちなんて、何なのいったい。反則だよ」
言葉にはしなかったけど、私も同感だった。
元気で明るくて笑顔が素敵な、優しいまあくん。彼は今も変わっていないけど、住む世界がかけ離れてしまったような気がする。
離れ離れになった20年の間に、九条くんの身の上に何があったのだろう。
暖かな木目の天井を眺めながら、私はぼんやりと想いを巡らせていた。
「ねえ、理恵」
急に真理が言った。
「その気があるなら、早くまあ兄をモノにしてよね。こんなチャンス二度とないよ」
「え……?」
「まあ兄が理恵を見る目、私と全然違う。悔しいけど、まあ兄、理恵のことが好きなんだよ」
「……」
「じゃないと、私がまあ兄、取りに行っちゃうからね。そうなってから文句言われても、しらないよ」
真理は冗談めかして言ったけど、目は本気だったように思う。