虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「まあくんは、本当に空が好きなんだね」
私は九条くんが笑顔で返してくれると思ってそう言ったのだけど、
「うん……」
九条くんは視線を窓の外に流したまま、そんな生返事をした。
「まあ……くん?」
私の表情に気付いて、九条くんは慌てて笑顔を取り繕った。
「ごめん、理恵。少し疲れが出たみたいだ。ちょっと、眠っていいかな?」
私は微笑んでうなずいたけど、いつもと違う九条くんの反応が、少し気になった。
ニューヨークから羽田までは14時間のフライト。前回は、篠原さんを田村部長から救けに行く途上だった。
あのときはなかなか寝付けずにいたけど、今回は実家に婚約の報告に行く道行きで、隣には九条くんがいる。開放的なビジネスクラスシートで、手を繋いで眠ることもできる。
私は薬指にはめたエンゲージリングを読書灯に照らしてしばらく眺めた後、読書灯を消して、九条くんに並んでシートをリクライニングさせて、目を閉じた。
羽田に着いて空港ターミナルを出ると、九条くんが駐車場から、純白に輝くスポーツカーを回してきてくれた。
スポーツカーのリアハッチにキャリーバックを詰め込んで、私たちはお台場にある大日本航空の系列ホテルに移動した。
日本滞在中は、ここが私たちの仮住まいになる。
スイートルームフロアのなかでも、東京港を一望できるコーナースイートに腰を落ち着けて、九条くんが口を開いた。
「母さんが来る前に、理恵のご両親にご挨拶に行くことになりそうだね」
ああ、ついに……。
「俺はともかく、理恵がそんなに緊張してどうするの?」
九条くんが明るく笑った。