虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「なあ、正臣くん」
ふいに、お父さんが口調をあらためた。
「きみも理恵も、もう大人だ。二人が決めることに私たちが、ことさらに口を挟むつもりはないよ。反対に、こうやって礼を尽くしてくれるきみの真心を、本当にありがたく思っている。どうか理恵を、幸せにしてやってほしい」
そんなお父さんの横に、お母さんも並んで腰掛けて、
「まあくん。──いや、正臣さんとお呼びしなければいけないのね」
めったに見せない真剣な表情で、言った。
「親のひいき目かもしれないけど、理恵は私たちの自慢の娘です。でもちょっと考えすぎて、余計なことまでしょい込むようなところがあって……。あなたのようなしっかりした方が理恵のそばにいてくださるのなら、私たちも安心です」
私のお父さんとお母さんが、飾り雛のように並んで正座して、九条くんにむけてちょこんとお辞儀した。
そしてお父さんが、一語一語区切るように、言った。
「結婚のお申し出、ありがたくお受けします。どうか娘を、宜しくおねがいします」
私たちがここに来るまで、何度も練習してくれたんだろう。きれいに揃った仕草だった。
私のために。
心配ばかりかけて、親孝行らしいことは何もできなかった、こんな私のために──。
私は、こんなにも優しい両親に、こんなにも愛されて生きてきた。
涙が溢れそうになる私の横で、九条くんはこう言ってくれた。
「おじさん、おばさん──。いえ、これからは、お義父さん、お義母さんと呼ばせてください。どうか、お顔をあげていただけますか」
九条くんの声も、微かに涙に濡れているようだった。
「お願いにあがっているのは僕の方です。理恵さんとの結婚を認めていただいて、本当にありがとうございます」