虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

ドバイの女王


 九条くんのお母さんが来日される前日、私たちはお台場のホテルを出て、羽田空港のターミナルに直結するホテルに移動した。そのホテルで、お母さんの到着を待つのだそうだ。

 そこは偶然、前回の東京行きで私が、ハワイ行きの便の出発までショートステイで利用したホテルだった。

「母さんはプライベートジェットでこちらに来るから、ここが都合がいいんだ。このホテルの1階に、プライベートジェット用の発着カウンターがあるんだよ」 

 そうなんだ、と感心する私に、

「利便だけを考えたらずっとここで待っていても良かったんだけど、母さんがいつ来られるか分からなかったから。このホテルはトランジット向きで、ロングステイには向いていないんだ」

 私にはこれでも、十分すぎるほど豪華なんですけど──。

 そして、翌朝。

 身なりを整えた私たちは、時間を確認してからホテル1階のプライベートジェット用カウンターに降りた。

「外で出迎えようか」

 九条くんがIDカードを見せて、カウンターの男性に小声で何か話かけると、黒いスーツ姿の男性は最敬礼して、私たちをカウンターの奥に誘った。

 プライベートジェット用のチェックカウンターを抜けて、私たちは白いコンクリートの上に直に立った。コンクリートにはカラフルな誘導線が何本も引いてあって、誘導標識や作業車もところ狭しと並んでいる。

 何よりこの目線で見るジェット機は、すごい迫力だった。

 轟音を上げ、離陸滑走を始める機体。
 徐々にエンジン音を高めながら、離陸位置へと移動して行く機体。
 それとすれ違うように、着陸したばかりの機体が、ターミナルの駐機スペースに向けて移動していく。

 ニューヨークのJ ・F・ケネディ国際空港もとても忙しい空港だったけど、羽田も忙しさでは負けていない。

「見えた、母さんの飛行機だ」  

 九条くんの言葉に目をこらすと、滑走路の延長線上の空に、純白のスマートな機体がライトを煌めかせながら、大きな白鳥のように地上に舞い降りようとしていた。
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