虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
真理にあんなことを言われたせいではないと思うけど、なかなか寝付けなかった。
疲れが身体の奥にわだかまって、ほてりを感じるくらいなのに、なぜか目が冴えてしまう。
やはり時差の影響なんだろう。
ここに来るまでのフライトで、中途半端な眠りを繰り返したのも、良くなかったかも知れない。
少し気分を変えたくて、真理を起こさないようにそっと、寝室から通路に出た。
小さなスポットライトが足元を照らす廊下を、ガラス張りのリビングに向かった。
あのマンハッタンの輝きに触れれば、心が空になれるような気がして。
リビングの扉を静かに開けて、私は息を呑んだ。
誰もいないと思っていたリビングの窓際のソファーに、黒い人影がたたずんでいた。
「まあ、くん……」
「眠れないのか? 理恵」
ローソファーに身を預けて、外を眺めていた九条くんは、軽く身を起こすと、私に微笑みかけてきた。
「そんなとこに立ってないで、座れよ」
ローソファーは外の景色を臨むように一基だけ置かれていて、座れば九条くんと横並びに、マンハッタンの夜景を眺めることになる。
私は小さくうなずくと、九条くんの横に、脚を揃えて静かに腰掛けた。