虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
滑走路に着陸したプライベートジェットは、誘導路をいくつも折れ曲がった後、私たちの前まで来てエンジン音を徐々に下げていった。長い旅路を物語るように、機体後部の左右のエンジンから、熱い陽炎が立ち昇って大気を揺らしている。
機体が止まると、地上作業員がすぐにタイヤに車止めを噛ませて、制服姿のスタッフが私たちの横に整列する。
機体のドアが開いて、ドアの奥に格納されていたタラップが、半回転しながら地上に降ろされた。
そしてまず、サングラスに黒スーツ姿の男性が二人、タラップを駆け降りて、タラップの左右を守るように立った。
そして機体の奥から、優美な人影が現れた。
その人は、淡いクリーム色のスーツの上に、アラブの女性が用いる黒く長い外套を、頭からかぶるように身につけていた。
それが、その人の威厳と美しさをいっそう際立たせて見えた。
その人は優雅な足取りでタラップを降りて、私たちの前まで来てくれた。
静かに微笑むその人に、九条くんが言った。
「元気そうだね、母さん」
「会いたかったわ、正臣。そして、理恵ちゃん。本当に、お久しぶりですね」
20年ぶりに会う瑠美おばさんは、以前と変わらず美しくて、以前にも増して高貴さと、侵し難い威厳を漂わせていた。