虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
到着した瑠美おばさんを誘って、私たちはホテルの部屋に戻った。
九条くんはこのホテルのスイートルームを取ってくれていたのだけど、それでも瑠美おばさんを見てしまうと、何か物足りなく感じてしまう。
もっとも、当の瑠美おばさんは、
「どうぞ、私に気を遣わないでね。私があなたたちに会いたくて来たのだから」
優しい声でそう言ってくれた。
瑠美おばさんと一緒に降りてきたボディガードの男性二人は、スイートルームのドアの外で、宮殿の衛兵のように仁王立ちしている。
私たちはその中で、テーブルを挟んで腰かけた。
「綺麗なったわね、理恵ちゃん」
瑠美おばさんは微笑んで、そう言ってくれるけど、
「いえ、そんな……」
こんなにも美と気品に満ち溢れた人に褒められると、逆に申しわけなくて、あちこちムズムズしてしまう。
「正臣、理恵ちゃん。私、ケーキを焼いて来たのよ。お茶にしませんか?」
「母さんのケーキか、久しぶりだなあ」
九条くんが嬉しそうに笑った。
瑠美おばさんは、専用の白磁のティーセットまで持参してくださっていた。
瑠美おばさんが手ずから淹れてくださった紅茶で、しばらく私たちは、素敵なティータイムを楽しんだ。
と──。
「理恵ちゃん」
急に、瑠美おばさんが口を開いた。
「私たちが変わってしまって、驚いたでしょう? 正臣の話では、まだあなたには何もお伝えしていないそうだから」
小さく頷く九条くんを見ながら、瑠美おばさんはまた、優しく微笑んだ。
「正臣のお嫁さんになってくださるあなたに、私からお話するわね。ちょっと長くなってしまうけど」