虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

「大変でしたでしょうね……」

 私はしみじみそう言ったのだけど、

「あら、意外に簡単だったし、面白かったわよ」

 ころころと少女のように笑う瑠美おばさんを見て、びっくりしてしまった。

「私は元CAですからね。難しく考えずに、CAの頃のお客様同士のトラブルと同じだと思うようにしたの」

 瑠美おばさんがおっしゃるには、トラブルを起こす人には特徴があって、

「思い込みが強くて、ならなければならない、しなければならないなんて、状況から求める結果を一直線に考えてしまう人。みんな大人になれば、世の中はそんなに単純じゃないって、気付くはずなのにね」

 身につまされる。
 私自身がそんな狭い視野に挟まれて、身動きが取れなくなってしまったことが何度もあったはず。

 恐縮する私に優しく微笑みかけながら、瑠美おばさんは語ってくれる。

「第一夫人や第二夫人には、自分の息子が跡目を継がなくては自分たちに未来はないという脅迫めいた思いが、イヴンの弟たちには、今自分が跡目の地位に就かなければ、永久にチャンスは巡って来ないなんて、こちらも脅迫めいた思いがあった」

 瑠美おばさんは、ベテランCAが後輩を指導するように、

「だからその思いをじっくり聞いてあげて、その思いに寄り添うようにしてあげたのよ。──形だけね」

 そう言ってまた、いたずらっぽい笑みを見せた。

 瑠美おばさんは、第一夫人と第二夫人には、「シャキールが分裂すると、あなたの息子の取り分が減ってしまうから、今はイヴンの兄弟たちと争わない方が得だ。逆に兄弟の誰かを後押しする代わりに、彼らの次の跡目にあなたの息子がつけるよう、彼らに約束させた方がいい」と説得し、
 イヴンの兄弟たちには、「今兄弟同士で争うと、シャキールが分裂してしまう。弱体化したシャキールを継いでもあなたたちに利は薄いだろうから、跡目を争う代わりにシャキールの中心の産油・精油部門をあなたたち兄弟で分け合ったらどうか。名目はイヴンに残して、あなたたちは実を取ればいい」と説得して、
 見事、シャキール・コンツェルンを分裂の危機から救ったのだった。
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