虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「馬鹿な話だよ」
九条くんが苦々しく言った。
「本当は、産油・精油部門の分社化だけでもシャキールにとっては重大な分裂なのに、あの強欲な叔父たちは、社長や代表の肩書さえ貰えればそれで満足だったんだから。まあお陰で、実質的にシャキールは何も変わらずに済んだけど」
「そんなに悪く言うものじゃないわ、正臣」
瑠美おばさんは、あくまでも笑顔を絶やさない。
「あの人たちの欲がわかり易くて単純だったから、私なんかの説得でうまくいったのよ。これが海千山千の経営者だったら、こうもうまくは行かなかったでしょう」
九条くんの話によると、イヴンさんの弟たち、つまり九条くんの義理の叔父たちは、
「自分一人では何もできないのに、皆にかしづかれるのが当然だと思っている、最低の奴」で、
その義理の叔父たちの子供、つまり九条くんの義理の従兄弟たちや、騒動の種になった第一夫人と第二夫人の子供、つまり九条くんの義理の兄弟たちは、
「シャキールを分裂の危機から救った功労者が誰かも忘れて、未だに母さんのことを端女扱いする、恩知らずな連中」なんだそう。
九条くんがシャキール家の内情に触れたがらない理由がよく分かった。
温厚な九条くんがこんなにも感情を顕にするなんて、滅多にないことだから。