虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「とにかく」
九条くんは言う。
「時代錯誤のシャキール家の連中はともかく、実際にシャキールで働いている社員や重役たちは、誰が真にコンツェルンの総帥にふさわしいかを知っている。誰の努力で、コンツェルンが機能を維持しているかを」
そして九条くんは、瑠美おばさんを優しく見つめて、
「母さんは今、シャキール家ではジャミーラと、アラブ風の名前で呼ばれているんだ。アラビア語で、『美しい人』って意味だよ」
ジャミーラ──。
瑠美おばさんに、これほどふさわしい異名もないと思う。
「でもコンツェルンで働く社員や重役たちは、隠れてこう呼んでいるんだ。ジャミーラ・スルターナって」
「ジャミーラ・スルターナ……」
言葉に出して繰り返す私に、九条くんは微笑みかけた。
「『美しき女君主』って意味。彼らには分かっているのさ。誰が真に、コンツェルンを率いているのかを」
瑠美おばさんは私を見つめて、静かに微笑んでいる。
私は身体中の血が騒いで、身体が震えだしそうになるのを抑えられなかった。