虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
知れば知るほど、瑠美おばさんはすごい人だった。
でもそのすごさを、瑠美おばさんは少しも気負わずに、淡々と言葉に替えて語ってくれる。
「シャキールの分裂騒ぎが一段落してから、私はハッサンとイヴンに、私がドバイから離れることを提案しました」
瑠美おばさんは、語り続ける。
「私がイヴンに近侍することで、他の妻妾たちやイヴンの兄弟を、無用に刺激してしまうことを恐れたのです」
確かにそれは、見る人によっては、瑠美おばさんが何か特別な扱いを受けているように印象付けてしまうかもしれない。
でも、そこまで──。
「ハッサンとイヴンからは、私にドバイに留まるようにと言われましたが、私は二人に、せっかく落ち着いたシャキールを、私が留まることで乱してしまいたくないと、そう伝えました」
最後にはハッサンとイヴンは、瑠美おばさんの言を容れて、少なくない資金を添えて、瑠美おばさんのシンガポール行きを認めてくれた。
「ハッサンとイヴンにはそのように説明したのだけど、実はそれだけではなくて、私にはシンガポールで試みたいことがあったのです」
アラブ風の黒い外套に身を包んだ瑠美おばさんは、にっこり微笑んだ。