虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
私はロッカールームで女性パイロット用の制服に着替えた。
デザインは男性用とほぼ同じで、紺のブレザーに金色のバッジと、袖と肩章の金色の三本線。そしてスラックス。スカーフとネクタイが選べたみたいだけど、私はブレザーと同色のネクタイを選んだ。
私はOLとして会社に勤めていた頃も、スカートよりパンツスーツ姿でいることの方が多かったけど、さすがにパイロットの制服を着ることになるとは思わなかった。
ロッカールームの鏡で何度も自分の姿をチェックしてから、私は九条くんのところに戻った。
にわかパイロット姿の私に、現役パイロットの九条くんは、優しく微笑んでくれる。
「素敵だよ、理恵。よく似合うね」
お世辞と分かっていても、九条くんにそう褒められると、ちょっと嬉しい。
「じゃあ、始めようか」
九条くんは私を連れて、シミュレータールームに入った。
そこはちょっとした体育館くらいの空間で、中に大日本航空のマークを付けたシミュレーターが、横に2台並んでいた。
シミュレーターは、例えは悪いけど、ゲームセンターに置いてある実際に乗り込んで遊ぶタイプのゲーム機に似ていた。
でもこちらは、大きさも複雑さも全然違う。
シミュレーターは、カプセルのような構造が何本もの機械の脚に支えられる形になっていて、訓練生が乗り込むカプセルは宙に浮かんでいるような状態だった。
乗り降りには、ビルの非常階段のような鉄製の階段を使うことになる。
私たちは2台並んだ手前のシミュレーターを使うのだそうだ。
「このシミュレーターは大型機の訓練用で、実際に俺が訓練しているものだよ。奥はそれよりも小さな機体の訓練用なんだ」
九条くんは私にそう説明してから、訓練を支援してくれるスタッフに声をかけた。
「彼女に基本操作を教えるので、ハッチを閉めるのはしばらく待ってください」
そして高い背をかがめるように、カプセルに乗り込む。私もその後に続いた。
「わあ……」
思わず声が漏れた。
中は以前に写真で見たジェット機のコクピットそのもので、3畳ほどの狭い空間の中に、操縦席が2つと、それをぎっしり取り囲むようにコンソールやメーターパネルが並んでいて、天井のパネルにも、ところ狭しとスイッチ類がついている。
素人の私には、見ただけで目がまわりそうになる光景だった。