虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
遠い日
もう20年以上も前のことになる。
私と真理は、家族と一緒に北関東のとある街に住んでいた。
私が小学校の2年にあがったある日、遠くの街から転校生がやって来た。
浅黒く日焼けした肌と、長い手脚、人懐っこそうな瞳をした、少し癖のある黒髪の男の子だった。
男の子は、元気で、明るくて、走れば誰よりも速くて、泳げばびっくりするほど綺麗なフォームで、誰よりも遠くまで泳いだ。
テストもほとんど満点で、授業中はいつもにこにこしながら、先生の話を聞いていた。
女子はみんなその子に夢中になって、男子は強力過ぎるライバルの出現にとまどっていた。
でもその子は、男子にも女子にも分け隔てなく、いつも人懐っこい笑顔で接していた。
それが、九条正臣くんだった。
お世辞にも都会とはいえない私の街に、九条くんは突然降ってきた、星のかけらのような男の子だった。
キラキラした九条くんの輝きはご両親ゆずりで、お父さんは航空会社のパイロット、お母さんはその会社の元スチュワーデス。
九条くんと仲良くなった私と真理は、よく九条くんの家に遊びに行って、九条くんのご両親にも可愛いがってもらった。
九条くんのお父さん──正隆おじさんは、国際線のパイロットで、海外から戻ると私と真理に、いろんな珍しいおみやげを買って来てくれた。
九条くんのお母さん──瑠美おばさんは、おばさんと呼ぶのをためらってしまうほど綺麗な人で、ケーキやクッキーを焼くのがとても上手だった。
私と真理が九条くんの家に足繁く通ったのは、もちろん九条くんが大好きだったからだけど、彼の家に行くと必ず出てくる、瑠美おばさんの美味しいケーキやクッキーが楽しみだったことも大きな理由だった。