虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「父さんは最高のパイロットだった」
九条くんは、抑揚のない声で言った。
「調べれば調べるほど、人に聞けば聞くほど、そう感じた。父さんは間違いなく、あの頃の日本最高のエアラインパイロットだった。もしかしたら、世界最高だったのかもしれない」
九条くんの視線は、機長席の前のディスプレイに注がれていた。
でもその瞳は、何も映していなかったのかもしれない。
「俺は、納得できないんだ。一体何があったのか。父さんは、一体何に──」
「まあくん!」
思わず叫んでいた。
『正臣を繋ぎ止めて』
瑠美おばさんの声が、耳元で聞こえたような気がした。
「理恵……」
九条くんは、驚いたような顔で私を見たけど、すぐに笑顔を浮かべて、
「ごめん。フライト中はフライトに集中しないとね」
元の調子で話し始めた。
「大丈夫、そろそろ旋回点だから気持ちを切り替えよう。理恵も、見ていてね」
九条くんは何事もなかったかのように、スティックを操りながら、管制官と交信を続けた。
機体は少しづつ降下している。
ウィンドウの外の景色が、次第に地表に近付いている。米粒のように見えていた建物が、自分の姿をアピールするように、はっきり見えるようになっていた。