虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 機体は、千葉の辺りから山手線を左回りに見下ろすように旋回して、次第に高度を下げていった。
 旋回中に、東京スカイツリーがよく見えた。

 そして今、羽田への直進路に乗っている。左前方に東京タワーが見えている。

「着陸する飛行機は、空港から出ている誘導電波を受けて、自分の針路や降下角が間違っていないか確認するんだ」

 九条くんは、今はいつもの落ち着いた様子で説明してくれている。

「横方向の電波帯がローカライザー、縦方向の電波帯がグライドスロープ。その電波に乗ると」

 九条くんが、ディスプレイに表示されたマーカーを示した。

「これがローカライザーとグライドスロープのマーカーなんだ。今はアライブ、つまり電波は受けているけど、まだ電波帯には入りきっていない状態。このまま進むと」

 マーカーが、ディスプレイの中央に向けて動き出した。

「これが電波帯に入っている状態で、キャプチャードってコールする。今はオートパイロットで降下しながら羽田に近付いているけど」

 九条くんがスティックに手を置いた。

「そろそろ手動に切り替えよう。理恵、右手をスティックに添えて、左手をスラストレバーに置いて」

 そして九条くんは、フラップとギアを下ろした。

 東京港が近付いて来る。
 
 羽田の滑走路が……見えた!
 滑走路端の誘導灯が、私たちを導いてくれる。

「ランウェイ・インサイト」

 九条くんがコールする。
 グライドスロープ、ローカライザー共に異常なし。

 地上に近付いて、九条くんは細かくスティックとラダーペダルを操作しながら、機体を安定させている。

 もう私の目には、東京港の工場や倉庫の屋根すれすれを飛んでいるように見える。
 フライトシミュレーターの仮想体験と分かっていても、汗が吹き出す。

『ファイブハンドレッド』 

 急に、機械の合成音声がした。

「機体が地上との距離を知らせてくれるんだ。500フィート、高度150メートルを切った」 

 九条くんが言った。
 合成音声の高度読み上げが続いている。

『ハンドレッド』

 高度が100フィート、30メートルを切った。誘導灯を飛び越えて、滑走路は目の前だ。

『フィフティー……フォーティー……』

『16L』の白字も飛び越えて、アスファルトの滑走路が迫ってくる。

『サーティー……トウェンティー……』

 機体の針路と滑走路の中央線がぴったりシンクロして、

『テン』 

 いきなりドン!という大きな音と衝撃がして、心臓が縮みあがった。
 
< 168 / 235 >

この作品をシェア

pagetop