虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
機体は、千葉の辺りから山手線を左回りに見下ろすように旋回して、次第に高度を下げていった。
旋回中に、東京スカイツリーがよく見えた。
そして今、羽田への直進路に乗っている。左前方に東京タワーが見えている。
「着陸する飛行機は、空港から出ている誘導電波を受けて、自分の針路や降下角が間違っていないか確認するんだ」
九条くんは、今はいつもの落ち着いた様子で説明してくれている。
「横方向の電波帯がローカライザー、縦方向の電波帯がグライドスロープ。その電波に乗ると」
九条くんが、ディスプレイに表示されたマーカーを示した。
「これがローカライザーとグライドスロープのマーカーなんだ。今はアライブ、つまり電波は受けているけど、まだ電波帯には入りきっていない状態。このまま進むと」
マーカーが、ディスプレイの中央に向けて動き出した。
「これが電波帯に入っている状態で、キャプチャードってコールする。今はオートパイロットで降下しながら羽田に近付いているけど」
九条くんがスティックに手を置いた。
「そろそろ手動に切り替えよう。理恵、右手をスティックに添えて、左手をスラストレバーに置いて」
そして九条くんは、フラップとギアを下ろした。
東京港が近付いて来る。
羽田の滑走路が……見えた!
滑走路端の誘導灯が、私たちを導いてくれる。
「ランウェイ・インサイト」
九条くんがコールする。
グライドスロープ、ローカライザー共に異常なし。
地上に近付いて、九条くんは細かくスティックとラダーペダルを操作しながら、機体を安定させている。
もう私の目には、東京港の工場や倉庫の屋根すれすれを飛んでいるように見える。
フライトシミュレーターの仮想体験と分かっていても、汗が吹き出す。
『ファイブハンドレッド』
急に、機械の合成音声がした。
「機体が地上との距離を知らせてくれるんだ。500フィート、高度150メートルを切った」
九条くんが言った。
合成音声の高度読み上げが続いている。
『ハンドレッド』
高度が100フィート、30メートルを切った。誘導灯を飛び越えて、滑走路は目の前だ。
『フィフティー……フォーティー……』
『16L』の白字も飛び越えて、アスファルトの滑走路が迫ってくる。
『サーティー……トウェンティー……』
機体の針路と滑走路の中央線がぴったりシンクロして、
『テン』
いきなりドン!という大きな音と衝撃がして、心臓が縮みあがった。