虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
 
 滑走路に着地してすぐに、九条くんはスラストレバーの前のリバーサーレバーを倒した。
 ゴオッとエンジンが唸って、逆噴射が作動する。何か大きな力で掴まれたように速度が落ちていった。

 九条くんは管制官と盛んにやり取りしながら、滑走路の端まで来ると、右に大きく曲がって機体を誘導路に入れた。

 後は誘導路を進んで、機体を空港のターミナルに寄せるだけ。

「お疲れさま、理恵。初めてのコクピットはどうだった?」

「……すごかった」

 本当に、それしか言葉が出ない。

「ジェット機は複雑で速くて、空は青くて果てしなくて、空から見下ろす地表は、本当に地図で見る通りの形をしていて……」

 私は大きく息を吐き出して、答えた。

「すごく綺麗で楽しかった。パイロットって、本当に素敵なお仕事だね」

 九条くんはにっこり微笑んで、スラストレバーの上に置いたままの私の左手に、自分の右手をそっと重ねてくれた。
< 169 / 235 >

この作品をシェア

pagetop