虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
正隆おじさんは、あまり家に帰って来れなかったけど、帰って来れば必ず私と真理におみやげを用意してくれていて、帰った次の日には必ず九条くんと二人で、自転車のツーリングに出かけた。
正隆おじさんの帰る日は、私と真理もワクワクしながら待っていた。
おみやげも楽しみだったけど、それよりも、何日かぶりで正隆おじさんと会えて、とても嬉しそうにしている九条くんや瑠美おばさんを見るのが楽しみだったからだ
幸せに溢れた、暖かい家族。
私も真理も、そのそばに居られるだけで、幸せだった。
でもその幸せは、なんの前触れもなく断ち切られた。
私たちが4年にあがった春の終わり、正隆おじさんはいつものように家から出かけて、二度と帰って来なかった。
テレビや新聞は、日本の旅客機が太平洋上で消息を断ったことを、しかめっ面で伝えていた。
そしてその機長が、正隆おじさんだったことも。
九条くんの家の玄関には、正隆おじさんが九条くんとツーリングに出かけた、ハンドルの低い大きな自転車と、それと同じデザインで、一回り小さな九条くんの自転車が並んだまま、いつまでも雨に打たれて濡れていた。