虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「理恵……」
はっとして私を見つめる九条くんに、私は精いっぱいの笑顔を浮かべた。
「私は信じるよ、まあくんのこと」
「……」
「まあくんは正隆おじさんみたいにはならない。まあくんは最高のパイロットだから。私のたった一人の、旦那さまだから」
言いながら、涙が溢れそうになる。
でも、泣いちゃだめだ。
大切な言葉を伝える瞬間を、自分の感情に逃げたくない。ありったけの想いを乗せた言葉で、大切な人に伝えたい。
「私はまあくんを信じてる。まあくんは、決して私を一人にはしないって」
「……」
「愛してるよ、まあくん。今までも、これからも。ずっと、いつまでも」
次の瞬間私の身体は、九条くんに強く抱きしめられていた。
「理恵……!」
九条くんの声も、微かに濡れていた。
「ありがとう、理恵……」
私も九条くんの広い背中に腕を回して、厚い胸板に、顔を押し付けるようにした。
空の魔物に、愛する人を奪われないように──。
羽田発ニューヨーク行きのその便は、夜の闇に向かって飛行を続けていた。