虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 正隆おじさんは、帰って来なかった。

 機体の破片すら見つからず、搭乗者の痕跡も無かった。

 梅雨の雨が降り注ぐある日、九条くんの家で、正隆おじさんのお葬式があった。

 お坊さんがお経を読む声と、単調な木魚の響き。写真の中の正隆おじさんは、笑ったまま動かなかった。
 九条くんは写真の中の正隆おじさんを、じっとまばたきもせずに見つめていた。

「まあくん」

 たまらずに声をかけると、九条くんはゆっくりと私を見て、静かに微笑んだ。
 
 薄く透けて、溶けて消えてしまいそうな笑顔だった。私は我慢できずに、九条くんに抱きついた。
 九条くんに抱きついて、私はわんわん泣いた。真理も九条くんに抱きついて、わんわん泣いた。 
 そうしないと九条くんまで、お線香の煙のように消えてしまいそうで……。

 泣きじゃくる私と真理に、喪服を着た瑠美おばさんが、

「理恵ちゃん、真理ちゃん、ありがとう。おじさん、きっと喜んでるよ」

 そう笑いかけて、 

「あっちのお部屋に美味しいケーキがあるから、おばさんと一緒に食べよう」 

 私たちの手を、そっと引いてくれた。
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