虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 一足先に帰国する私を見送りに、九条くんもJ・F・ケネディ国際空港に来てくれた。
 半年前に二人が再会したこの場所で、私は彼に見送られて、先に旅立とうとしていた。

「じゃあ、先に行っているね」

 出国用ゲートに並ぶ前に、私と九条くんはもう一度ハグを交わして、軽く唇を重ねた。

「お父さんとお母さんによろしく。俺もすぐに行くから」

 いつもの九条くんの、優しい微笑み。
 
「行ってらっしゃい、理恵」

 私も手を振って、笑顔でゲートに進もうとしたけど──。

 何故か急に、胸がざわついた。
 わけも分からず私は九条くんのもとに駆け戻って、ぶつかるように抱きついた。

「まあくん──!」

「……どうしたの、理恵?」

 戸惑いながらも、九条くんは私を優しく抱きとめてくれる。
 そんな彼の胸にすがりつきながら、

「まあくん。私たち、ずっと一緒だからね。何があっても、ずっと一緒だからね」

 私はそう、繰り返していた。
 
 自分でも何が言いたいのか分からない。   
 何か理性とは別のところにある自分が、勝手に自分の口を動かしているような感じだった。
 
 九条くんはそんな私の目を、優しく力強い瞳で見つめて、頷いた。

「俺たちは一緒だよ。今までも、これからも。ずっと一緒だ」

 九条くんは、ゆっくりと力を込めて、そう言ってくれた。

 私は後ろ髪を引かれるように、何度も九条くんの姿を振り返りながら、出国ゲートをくぐった。

 そして私たちは別れて、私は一人、羽田行きの便に搭乗した。  

 離陸してからも何度も、私は九条くんの面影を探すように、遠ざかるニューヨークの方角を振り返っていた。
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