虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
二人の翼
西に向かって
『理恵っ、聞こえてる?!』
紫月さんの声がスマホから流れてくる。
『正臣の機体にトラブルが発生したらしくて、機体が緊急降下したって……!』
え、嘘だよね。
だって今日の朝だよ、九条くんとお話したの。
今日の夕方には羽田に着く予定なんだよ。
後、数時間で……。
『理恵、しっかりなさい!!』
紫月さんの声で、ようやく私は正気に戻った。
「紫月さん、九条くんは……?!」
『私も詳しいことは分からないけど、まだ飛行は続けているわ。あなた、今どこにいるの?』
私はお台場のホテルの名前を告げた。
『ああ、よかった……!』
紫月さんはそう言って、
『今から迎えを向かわせるから、エントランス前で待っていて。羽田で会いましょう』
ホテルのエントランスに黒塗りの大型セダンが横付けしたのが10分後、私を乗せたセダンは飛ぶように首都高速を駆け抜けて、10分を切る早さで羽田空港の敷地内に入った。
車は空港ターミナル前を通り抜けて、大日本航空の整備ハンガーの前で止まった。
九条くんとフライトシミュレーターに乗った、あの中央訓練施設のすぐ隣だ。
見るとハンガーの前に、紫月さんと榊さんが迎えに来てくれていた。
「理恵、こちらに」
「紫月さん……!」
「マスコミが嗅ぎつけたわ、早く」
すでに空港ターミナルの前には、テレビ局の中継車が数台止まったいた。
もうすぐエントランス付近は、詰めかけた報道陣で身動きが取れないほどの騒ぎになるだろう。
紫月さんに手を引かれて、私は職員用通用口からターミナルの建物に入った。
榊さんは紫月さんと私を守り隠すように、ぴったりと寄り添ってくれている。
「どちらに向かうんですか」
「大日本航空の運航管理センターよ」
関係者以外立ち入り禁止と表示された区画を幾つも駆け抜けて、私たちは目指す運航管理センターの扉を開けた。