虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
私は長椅子に一人、腰掛けていた。
白い霧が立ち込めて、人の気配はなかった。
しばらくして、私はそこが、半年前に降り立ったJ・F・ケネディ国際空港の、到着ロビーの片隅だったことを思い出した。
そう、ここで私たち、再会したんだ。
でも、どうして?
どうして誰もいないの……?
辺りを見回す私の前に、ふいに光が差し込んだ。
光に包まれて、背の高い人影が立っていた。
紺の制服と制帽。制服の胸には、翼を意匠した金色のバッジが輝いて、制服の肩と袖口には、金色に輝くラインが三本縫い付けられて──。
制服姿の九条くんは、静かに微笑んで、私のことを見つめていた。
『理恵。どうしたんだ? こんなところで』
目の前の九条くんは微笑んだまま、口を動かしていないのに、あの日の彼の言葉が耳元でリフレインする。
そんな九条くんの言葉に、私も胸の中で答えていた。
──私、ずっと待っていたんだよ、あなたのこと。
『俺を忘れたのか? 理恵』
──忘れたことなんてない。私、ずっとあなたを探していた。ずっと、あなたを求めていた。20年前から、ずっと。
私は微笑んだまま動かない九条くんに、語りかけた。
──愛してるよ、九条くん。あなただけを、ずっと。
だからお願い。
いかないで、まあくん。
私を一人に、しないで──。
私も九条くんを、微笑んで見つめた。
涙をぽろぽろ、こぼしながら……。