虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
機体は大きく破損したけど、なんとか修復可能で、何より乗客の命を損なわずに済んだ。幾人かが、胴体着陸の衝撃で身体をぶつけたり、機体からの緊急脱出時に手足をすりむいた程度で、あれだけの大事故でありながら、奇跡的に少ない被害で済んだ。
頭部に負傷して意識不明だった機長の原田さんは、機体の破片が頭部に当たって頭蓋骨骨折の重症だったけど、この病院で緊急手術を受けて手術は成功、もうすぐ集中治療室を出て一般病棟に移るのだそうだ。
九条くんは、自分はぼろぼろに傷付きながらも、機体と乗員、乗客の命を守りきった。
そのいきさつを、私達は一昨日お見舞いに来てくれた、風間さんの口から聞くことができた。
「本当によくやってくれた、九条」
藤堂社長は、微笑んで言った。
「だから私も約束を果たそう。あの日、私が見たことを、今から全て話す」
「お話の前、ですが」
急に榊さんが口を挟んだ。
「藤堂社長がお越しになられる途上、行く手を阻もうとする者どもが幾人かおりました。全て私と『黒蜥蜴』で排除いたしましたが、三橋たちは、これから社長がお話しされることを、なんとしても私どもの耳には入れたくなかったようです」
「馬鹿な奴等だ、後でたっぷり後悔させてやる」
吐き捨てる直人さんに、紫月さんも言葉を続けた。
「社長と社長のご家族の身の安全は、我が御倉が責任を持ってお守りします。どうか、ご存知のことを私たちにお聞かせください」
「ありがとうございます、紫月さん」
藤堂社長は、弱々しく笑った。
「私の家族までお気遣いいただき、本当に感謝しています。ですが私自身は、守られるに値しない人間なのです」
「社長……」
「卑怯者の私に比べ、君の父親は、本当に素晴らしいパイロットだった。九条、君の父親は、嫉妬すら憚れるような、世界最高のパイロットだったよ」
そして藤堂社長は、語り始めた。