虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「では、あの日、富永が怯えていたのは、自分に向けてミサイルが降って来るかも知れないことを知っていたからなんだな」
藤堂社長の推論に、直人さんが頷いた。
「多分奴は自分の親父から、自分の頭の上に何が飛んでいるのかを聞かされていたんでしょう。そして富永が九条機に追い付かれることにナーバスになっていたのは、『衛星』の真下を横切る機影が多ければ多いほど、ミサイルの発射確率が上がって、かつ後続する機体が優先して狙われることを知っていたからだと思います」
「高見澤さま。それは、まさか……?!」
榊さんがこんな声を出すなんて、滅多にあることじゃない。
「さすが榊の旦那、よくご存知だ」
直人さんは、口元を歪ませながら、言った。
「画像認識誘導装置。目標が複数ある場合には、直近の目標を優先して攻撃する。──三友電機が、自衛隊に納入したミサイルシステムに使われた技術だよな」
「ぼ、防衛機密の漏洩まで! 何考えてるのっ、あいつら!!」
紫月さんは、テーブルを叩き割りそうな勢いだった。
「下手人は三橋だろう。奴はその頃、防衛政務次官をしていたからな」
「なんてことなの! 信じられない! あり得ない!!」
紫月さんは、顔を真っ赤にして叫んだ。
「大体、直人も直人よ! なんで私にも正臣にも、詳しく教えてくれなかったの?!」
そんな紫月さんに、直人さんは静かに語りかけた。
「今のお前の姿が全てだよ、紫月。俺が早々に全て教えちまったとして、お前ら自重できたのか?」
「……」
「そして考えてみろ。三橋と富永の親分は誰だ?」
「まさか……」
口に出すのを憚られるその名前を、九条くんは冷静な声で口に出した。
「なるほど。今回の黒幕は、南條首相かもしれないってことだな」
三橋大臣も富永副幹事長も、南條首相の派閥に属していた。
「そう考えるのが順当だろう。つまり、今回の相手は日本国そのものだ。いくらお前たちが大金持ちでも、気ままにキレて喧嘩をふっかけて、ただで済む相手じゃない」