虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「耳元で声がしたんです。『頑張れ、正臣』と。あれは──父の声でした」
皆が見つめる中、九条くんは穏やかな顔をしていた。
「そしてリバーサーレバーにかけた指に、誰かの指が重なるのを感じた。その瞬間、リバーサーが奇跡的に作動したんです。もしあのとき、リバーサーが作動しなかったら、スピードがつき過ぎて、胴体着陸もうまくできなかったでしょう」
「……」
「夢かもしれない、思い違いかもしれない。でも僕は、あのとき父が、僕を助けてくれたのだと信じています」
藤堂社長は、下を向いていた。
そしてその口から、嗚咽が漏れ始めた。
「九条──。お前はあれからずっと、皆を守って、空を飛び続けていたんだな……」
そして嗚咽は、低い慟哭に変わった。
「九条──。許してくれ、九条──」
肩を震わせ、涙を流し続ける藤堂社長の姿を、皆が静かに見つめていた。