虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 私が提案した『青の基金』は、大日本航空の主催、御倉グループ各社の協賛で、大々的にスタートした。

 紫月さんの御倉グループのバックアップで、資金は潤沢過ぎるほど集まったけど、それに加えて話を聞きつけた瑠美おばさんが、数えるのに苦労するほどの資金を提供してくれた。

 お礼の電話をかけた私に、瑠美おばさんは受話器越しに、こう言ってくださった。

『正臣をちゃんと繋ぎ止めてくれたのね。理恵ちゃん、本当にありがとう。そのお金は私のほんの気持ちだから、あなたの思うように使ってください』

『ほんの気持ち』で数十億ドルをぽんと渡してくれるのだから、やはり瑠美おばさんって、桁違いな人だ。

 マスコミが基金設立の明るいニュースを報じている裏で、紫月さんや直人さんたちによる反撃は始まっていた。

 まず、あの日事件を隠蔽した張本人の富永本部長は、機材選定に関わる収賄容疑で逮捕され、懲戒解雇となった。
 続いて嶋田常務は、背任の疑惑から緊急役員会で解任動議が決議され、本人は何が起こったのか訳のわからないまま、社外へ放逐された。

 さすがにここにきて、三橋大臣も富永副幹事長もこちら側の反撃に気付いたけれど、先手を許した差は大きく、また、迂闊に隙きを見せるような直人さんや紫月さんたちではなかった。

 三橋大臣も富永副幹事長も、自身の政治資金ルートをズタズタにされ、過去の疑惑だの黒い交友関係だのを次々に暴かれて、二人とも相次いで役職を辞任、それでも追及の手は止まず、遂に二人は議員辞職に追い込まれて、故郷に引退した。

 そしてさしもの南條首相も、自派の有力議員の相次ぐスキャンダルに政権運営が難しくなり、任期半ばにして内閣総辞職に追い込まれた。

 直人さんと紫月さんが反撃を開始して、わずか3か月ほどで、一国の最高権力者が、その座を追われたのだった。
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