虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「ねえ、まあくん」
私は声をかけた。
「不思議だと思わない? 直人さんも明日美ちゃんも、紫月さんも榊さんも、もう席を立ったのに、まだみんながそばにいてくれるような気がする」
「そうだね」
九条くんも、静かに微笑んだ。
私はそんな九条くんの肩に、そっと頭を寄せた。
「あの4人だけじゃなくて、瑠美おばさんや、真理や、私のお父さんとお母さん、藤堂社長や風間さんや、私たちの周囲の大切な人たちが、ものすごく身近に感じられるの」
「……」
「離れていても、みんなが誰かを想って、繋がって、支えあってるんだって感じられる。この空の連なりの下で、みんなが繋がっているんだなって」
「……そうだね」
優しく息を吐き出しながら、静かに笑う九条くんに、私は言った。
「まあくん、ありがとう」
そして、問いかける眼差しの九条くんに、語りかけた。
「多分幸せって、こんな感覚のことなんだと思う。離れていても、繋がっている。側にいなくても、相手が自分を想っていてくれると、信じられる。そんな想いの輪の中に、自分も連なっていると感じられることが、幸せなんだなって」
羽田空港へ着く最終便なのか、ライトを明滅させた機影が、エンジンの音を響かせながら、次第に高度を下げていく。
「まあくんのお父さんも、きっとその連なりの中にいてくれる。姿は見えなくても、私たちを想っていてくれる」
「理恵……」
九条くんの優しい瞳が、目の前にある。
愛しい息遣いが、私の頬に触れる。
「全部あなたが教えてくれたことだよ、まあくん」
私も、彼を見つめながら、言った。
「人を想うこと、想われること。愛すること、愛されること。──みんなあなたが、私に教えてくれたこと」
私は彼にそっと身体を重ねて、囁いた。
「愛してるよ、まあくん。あなただけを、いつまでも。ずっと、どこまでも」
九条くんの右腕が、私の背中に回った。
彼に強く抱きしめられながら、私たちは唇を重ねた。
東京港の天王洲、深夜11時。
私たちはレインボーブリッジの輝きに見守られながら、いつまでも口づけを交わしていた。