虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
虹色の空へ
その日、J・F・ケネディ国際空港の到着ロビーは、いつもと違う雰囲気に包まれていた。
辻々に警備員が立ち並んで、旅行者に立ち入り禁止であることを伝え、礼装に身を包んだ出席者たちを手際よく誘導する。
受付には、ボランティアで大日本航空のCAたちが、制服姿で立ってくれた。
行き交う旅行者たちは、その集まりを遠目に眺めながら、映画の撮影か、どこのセレブの催しなのかと噂しあった。
でも、ここが私たちの、第二のスタートの場所だったから。一年前、ここから、私と九条くんの物語は、20年の時を経て再びスタートした。
式をここから始めようと決めたのは、私と九条くんの、二人の意思だった。
ロビーをワンブロック貸し切りにして、そこで私たちの結婚式は始まった。
出席者がロビーの長椅子に腰掛けて見守る中、その長椅子の一つに、私はウエディングドレス姿で腰掛けていた。
この日のために二人で選んだドレス。純白の生地をすっきりまとめたデザインは、誠実に生きていきたいと願う、二人の想いの現れだった。
そして、これから始まるイベントのためでもある。
ロビーにファンファーレが鳴り響いて、参列者の私語が止んだ。
そしてロビーの明かりが消されて、暗がりの中で私だけが、スポットライトに照らし出された。
一年前、私はこの場所で、たった一人で泣いていた。
全てを奪われ引き裂かれて、傷だらけの心を抱いて、この席に座り込んでいた。
そこに、彼が現れた。
暗がりの先に、もう一つのスポットライトが灯されて、背の高いパイロットの姿を照らし出した。
紺の制服と制帽、制服の胸には、翼を意匠した金色のバッジが輝いて、制服の肩と袖口には、金色に輝くラインが縫い取られて──。
あの日と異なるのは、九条くんの肩と袖口の金色のラインの数だった。
一本増えて、4本のラインが輝いている。あの苦しかった羽田へのフライトが評価されて、九条くんは機長昇格が認められていた。
そして今日は、機長としての彼の初フライトでもある。
仲人の藤堂社長に見守られながら、九条くんがこちらへ近付いてくる。
二本のスポットライトが一つに交わって、九条くんの優しい声がした。
「お待たせ、理恵。──行こう」
九条くんが私の手を取って、静かに導いてくれる。
私は可愛らしいスズランで形作ったウエディングブーケを手に、ゆっくりと立ち上がった。