虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 機体のドアが閉まって、ボーディングブリッジがゆっくりと離れていく。

 地上作業車に機体がプッシュバックされる前に、私と九条くんはあらためて機内を回って、出席の皆さんに声をかけた。

 イベントのきらびやかさに比べてウエディングドレスをシンプルにまとめたのは、機内を歩いて皆さんにご挨拶をするときに、裾が座席に引っかかったり、皆さんの邪魔にならないようにという気遣いからだった。

「その分、お色直しは派手めにいきましょうね」
 わざわざドレスのデザイナーを紹介してくださった紫月さんは、そう言って笑ってくれた。

 この機体はこのイベントのために特別に改修されていて、全席がファーストクラス並みの広さとリクライニング機能を兼ね備えていて、客室後部には座席を取り外して、出席者のためにバーカウンターとラウンジも設けてあった。

 この日だけの、特別の贅沢。
 みんなに私たちの旅立ちを楽しんで、祝福してもらいたい。

 紫月さんと榊さんは、紫月さんが柔らかな桜色のドレス、榊さんが漆黒のイブニングに蝶ネクタイといった装いで、紫月さんはそのドレスで、歓びの春を演出してくれたのだろう。

 明日美ちゃんは可愛らしいクリーム色のフォーマル、直人さんは珍しく長髪をアップにまとめた上に、パリッとした黒のイブニングとネクタイを合わせて、二人の魅力を際立たせた装いだった。

 みんなの笑顔に見守られながら、私たちは結婚する。

 機内を一巡すると、九条くんと私はあらためて出席の方々に一礼して、九条くんはコクピットに、私は自分の席に着いた。

 シートベルト着用のサインが灯って、機内モニターが非常用の救命具の解説を始め、CAたちが実際に通路に立って、救命具の操作や装着方を実演する。

 地上作業車に押されて、機体がゆっくりとバックし始めた。
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