虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
今、私を見る九条くんの瞳は、あの頃と同じ優しい色をしている。
でも離れ離れになっていた20年という時間が、深い谷となって二人の間に横たわっている気がした。
優しくて、頑張り屋だった九条くん。
大切な自転車を穢されて、涙をぽろぽろ流していた。
なのに別れの日には、あんなに穏やかな顔をしていた。
きっとこの20年、あなたはあのときと同じような思いをいっぱいして、あのときと同じように、唇を噛んで耐えてきたんだろうね。
私も、そうだよ。
あなたの知らない場所で、あなたの知らない人に出会って、愛して、愛されて、そして別れてきた。
涙を流して、唇を噛み締めるたびに、私たちは大人になっていったのかもしれないね。
でも、考えてしまう。
あの日、正隆おじさんが何もなく帰って来てくれたなら、私たちはどうなっていたのだろう、と。