虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 私は身体を少しだけ傾けて、彼の澄んだ瞳を見つめた。

 教えて、九条くん。

 あの日、あんなことがなければ、私たちずっと一緒にいられたかな。
 二人笑いあったまま、同じ早さで大人になって、同じ気持ちを交わすことができたかな。

 私たち、愛し合うことができたかな。

 もし、そうだったら……。
 
 私、あんな人に騙されて、穢されずに済んだかな。
 何もかも奪われて、こんな惨めな思いをせずに済んだかな。
 
 私、幸せになることが、できたのかな。

 教えて、九条くん……。

 じっと見つめ続ける私に、九条くんは、

「どうして泣くの? 理恵」

 いたわるように、口を開いた。

 私は小さく首を、横に振った。

 泣いてない、と言いたかったのか。 
 上手く説明できない、と言いたかったのか。
 自分でも、よく分からない。

 ただ、溢れて頬を伝う涙を、止められなかった。
 
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