虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
九条くんも、私を見つめていた。
ローソファーに身体を預けたまま、黒く澄んだ、優しい瞳で。
その瞳に吸い込まれるように身体が傾いて、気が付けばこつんと、九条くんの胸板に頭をつけていた。
九条くんと触れ合っている頭に、九条くんのぬくもりを感じる。
私はそのまま力を抜いて、九条くんにもたれかかるように、身体を重ねた。
「……理恵」
わずかに身体を起こそうとする九条くんに、
「お願い、まあくん。このままで……」
私は、言った。
「お願いです。朝までこのままで、いさせて」
九条くんの厚い胸板、
伝わってくる鼓動、
優しいぬくもり……。
涙が溢れて止められなくて、ぽろぽろこぼれて、九条くんのシャツに暖かく吸い込まれていく。
私は涙を九条くんにこすりつけるようにして、声を詰まらせながら泣いていた。
ふいに、肩に暖かさを感じた。
九条くんに、肩を抱かれていた。
涙に濡れたまま少し顔をあげると、あの優しい瞳がこんなにも近くで、私のことを見守ってくれていた。
九条くんは、大丈夫だよ、とでも囁くように優しく微笑んで、ローソファーに敷いてあったブランケットを、そっと私に掛けてくれた。
そしてもう一度私の肩を抱いて、言った。
「ゆっくりおやすみ、理恵」
その一言で、私はあの懐かしい日に戻って、九条くんの胸でひとしきり泣きじゃくった。
泣いて、泣きつかれて、いつの間にか、静かな眠りに落ちていた。