虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
「あのさあ、理恵」
急に真理が身を乗り出した。
「あれこれ格好つけたところで、あなた現に無職なんだから。私もまあ兄も、あなたのこと心配してるって分からないの?」
私が退職したことを、真理は九条くんのマンションに向かうクーペの中で、彼に話してしまっていた。
もちろん、細かい理由は伏せてあるけど。
ぐっと言葉に詰まる私に、真理はたたみかけて、
「家無し職無しのあなたを、素敵な王子様が拾ってくれようって言うんじゃない。何が気に入らないのよ」
「そんな言い方しないで!」
さすがにカチンと来たけど、真理はお構いなしに、
「理恵。現実を見なさいよ」
そして口調を変えて、
「まあ兄のこと。あれだけ好条件の男、他の女が放っておくとでも思ってるの?」
「え……?」
「背が高くて、ハンサムで、お話が面白くて、料理が上手。そのうえお金持ちでパイロット」
真理はため息混じりに、
「ポーカーで言ったらフォーカードかロイヤルストレートだよ。これに王族とか貴族がくっつけばロイヤルストレートフラッシュ。そんなの相手に、あなたどんな手札で勝負するつもりなのよ」
「……」
「幸い、こちらには幼馴染みってアドバンテージがあるからね。ライバルに追いつかれないうちに、既成事実を盾に逃げ切るのよ」
「既成、事実……?」
「なにブッてるのよ。まあ兄に抱かれたんでしょ?」