虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
聞きたい。九条くんの本心を。
私のこと、どう思ってるの?
私、あなたのこと、好きになってもいいの──?
怖くて聞けない。
でも、聞かなくちゃ。
私の思い込みに過ぎないのなら、今ならまだ、ありがちな勘違いで済ませられる。
このままなにもしないでいると、
もう気持ちが抑えられなくなってしまう。
唇が乾いて、喉がカラカラで、呼吸が早くなる。
私はカシスソーダを口に含むと、ありったけの勇気をふりしぼった。
「あ、あの……まあくん」
「なに?」
「まあくんは、結婚……とか、考えないの?」
わーっ、私のばかっ!
なんでそんなことしか聞けないの……?
九条くんは、いきなりだね、と苦笑すると、私にいたずらっぽい目を向けた。
「理恵はどうなの? そんな人がいるの?」
顔から火が出そう。
とても言えない、あなたに惹かれています、なんて……。
九条くんは、静かに微笑むと、言った。
「いるよ、好きな人。俺の片想いかもしれないけど」
雷が落ちたような気がした。
でも九条くんは、こう言葉を続けた。
「その子はずっと昔、いたずら書きされた俺と父さんの自転車の汚れ落としを、手をぼろぼろにしながら手伝ってくれたんだ。その子はもう、忘れちゃったかもしれないけど」
急に視界が遠くなって、指先が震えだした。
自分の身体が、魔法使いの力でマンハッタンの夜空に放り出されたような気がした。